□□□(クチロロ)「everyday is a symphony」

everyday is a symphony

everyday is a symphony


 いとうせいこうを正式にメンバーとして迎えての、初のアルバム。
 フィールドレコーディングというテーマをアルバムの根本に据え、野外で採取された環境音を巧みに取り入れた遊び心溢れる一枚。

 いとうせいこう氏曰く「ブレイクビーツ・ミュージカル(GOLDEN LOVE)、サンプリング・オペラ(TONIGHT)と来て、次はフィールド・レコーディングだ!」(ナタリーより)という流れでスタートしたという今回のアルバム。
メジャー以降□□□はヒップ・ホップ/ブレイク・ビーツ色が強くなっているけど、それら音楽ジャンルにとってサンプリングは切っても切り離せないもの。だったら日常音をサンプリングして音楽にしたら楽しいんじゃない?それが□□□の順当な進化じゃない?という所が、どうやら出発点のよう。

電車、風呂、海、卒業式・・・。企画ありきで始まっているから、こと素材に関しては脈絡はないし、アルバムにも統一感があるようで無いものの、意欲的に「新しい事をしよう」としたチャレンジ・スピリットで貫かれた一枚に仕上がっているという感じ。

 ただ、方法ばかりがピックアップされて影に隠れがちだけど、この曲の良さなんなの、マジで。

 いとう氏宅に新年会に向かう電車の中で録音されたという車内音をサンプリングして作られた「Tokyo」。それだけ聞くとムードっ気ゼロだけど、<窓の外を次々と通り過ぎる/いろんな景色を/僕は何も手に入れられない/そんな事を思いながら/僕はいま君に会いにいく/それで少し救われる>こんな切ないフックをポロっと仕込む巧みさとか、ふいに飛び出すマジソング「moonlight lovers」とか、「00:00:00」。リリックもいやに本気だし、なによりロマンチック。名ラブソング多数。

 ヒップ・ホップがルーツにあって、フィールドレコーディングという新たな手法を手に入れて、でもオザケンの血だって流れているよ、勿論さ。てな感じ。
 10年代品質。次世代ミクスチャー。傑作。