MASH「よろしくマイハート」

J-RAPの進化は凄いと思う。

自らの権利や主義主張を誇示する為に、どうしても言葉数が多くなった元来の「ラップ」という表現方法。その「ラップ」が持つ情報量の多さを、今J-POPで活躍するラッパー達はとってもうまーく利用していると思う。たとえば最近チャートアクションが好調なGReeeeNだとか、FUNKEY MONKEY BABYSだとか。彼らの「キセキ」や「告白」っていうヒットシングルは、やっぱりどう聞いてもとってもいい曲。けど、何が聞き手をそんなに感動させるんだろうか?多分それは、情報量の多いラップをストーリーテリングの手段として使ってるからだと僕は思う。短い3分〜5分程度の一曲の中で、歌詞の世界に起承転結をつける。「歌」だとどうしても言葉数が限られてくるけど、そもそも”伝えたい事が多すぎた”人たちが発明した「ラップ」を使えば、例えば「切ない恋の物語」は、はじまりから終わりまでをきちっと語りきる事が出来る。畳み掛けるような言葉数で語られる、美しすぎる恋物語に感動しない訳がない!と。そんな具合で、J-RAPはぐいぐいと”日本的”な表現方法を身につけて、進化しまくっていると思う。
(でも言葉ばっかりじゃなくて、”音の隙間”とか”歌詞の行間”に漂ってるロマンにも気づいてくれティーン達。)

MASH「よろしくマイハート」を聞いた。

上で語っている様なものが最新型の日本のラップだとするならば、嫌に前時代的なのがこのアルバム。まずは最終トラックの「ヒーロー」を聞いてみてほしい。サウンドこそ、最近ありそうなラップ・ミュージックと感じるかもしれない。でも、ここで鳴っているのは美しすぎる恋物語とかではなく、彼が超個人的に伝えたい事。皆に向けた感動のストーリーじゃなくて、彼が彼自身に宛てた叙情詩。・・どっちが優れている音楽とか、そういう問題じゃない。全然違う。ただこのアルバムは、現代的なJ-RAPとはちょっと性格が違うっていうのは、きっと聞いてもらえればすぐ解ってくれると思う。
ひとりの男の、夢とか理想とかそれに対する不安とかが「語られる」というか「吐き出される」。見てくれはよかないけど、そこには並々ならぬリアリティがある。そのリアリティには、時に、どんな物語よりパンチがあったり、胸の奥の方に訴えかけるものがあったりする。それがどんな物語よりドラマチックだったりする。
って回りくどいけど、とにもかくにもこれは必聴!「伝えたい」っていう、ラジカルなラップのスタイルがここにはあって、ちっぽけなMASHという歌い手が丸裸の状態でちょこんと待っている。丸裸=真摯でストレート。こんな人が本当に音楽界の「ヒーロー」になった時には、多分たくさんの今を生きる”一生懸命な人たち”が救われると思う。

よろしくマイハート

よろしくマイハート