夜を越えて。the Arrows『アロイ』

アロイ

アロイ

 フランツ・フェルディナンドBPMをグググと抑えたアダルティなダンス・アルバムをこしらえたかと思えば、レペゼン名古屋のダンス・ロック・バンドthe Arrowsが新作で描いたのは、ダンスフロアの熱狂どころか、チルアウトの静寂と切なさどころか、夜明けの虚しさ!
ライヴハウスを出て、街が朝日で白む光景が目に浮かぶ「夜明けのRhapsody」から幕を明け、次々歌われるのは「日常」「生活」の風景。・・みんな夢から覚めちゃったの?でも、これが文句無く傑作!

 「みんなの朝 もうすぐさ それぞれの明日へ消えていけ」

 ダンス・ナンバーがなぜ時折“切なく”聞こえるかというと、それはその馬鹿騒ぎに終わりがある事を知っているから。何もかも忘れて、非日常に体を委ねる時間が刹那だってちゃんと解っているから。だからくるりの「ワールズエンド・スーパーノヴァ」は「僕らいつもべそかいてばかり」そしていつか「夜を越え僕ら旅に出る」。

でも、あえて描かれてこなかった“夜明け”以降の物語がここでは全編に渡って語られる。それは、やっぱり全然派手じゃなかった!まったく地味で頼りない僕等の「日常」。けど、今日も今日とて繰り返す、唯一エターナルな僕等の「生活」。

その中で僕等は明らかに無力で、何をすれば、何処へ行けば輝けるのかを探し続ける。今日も。
そんな中、the Arrowsが締めくくる「そうさ 今日の意味は 明日の果て」「どこへ行ってもいいんだよ」。

 あぁ、なんてロマンチックなアルバムだろう!大傑作!このアルバムと共に、涙まじりの夜を越そうぜ兄弟。

 ちなみに、プロデュースド バイ オオヤユウスケ、だそう。そろそろPolarisの新作も聞こえてこないかなぁ。