CROSSBEAT 2009年4月号

 仕事が落ち着かず、あぁでもない、こうでもないとしている内にいつしか午前0時を回ってしまう。そんな生活が続いています。行き詰って来ると、買っておいた音楽誌をはしから読み出す。今日は手元に、「rockin'on」「ROCKIN'ON JAPAN」「CROSSBEAT」の3誌。

 「CROSSBEAT」今月号の特集は『シド・ヴィシャス』、そして『ロックと死の実像』。

 言わずもがなシド・ヴィシャスは、イギリスのパンク・バンド、セックス・ピストルズのベーシスト。79年に21歳の若さで没。薬物の過剰摂取によるもの。特集では、そんなシドのヒストリーが映画監督アラン・パーカーによって綴られているほか、イアン・カーティスジョイ・ディヴィジョン 後のニューオーダー)、カート・コバーンニルヴァーナ)、フレディ・マーキュリー(クイーン)ほか、壮絶な死を遂げたロック・ミュージシャン達の記事が掲載されています。

 「虎は死して皮を残す」と言いますが、彼らがロック史に残していった幾つもの音楽と逸話は、こうして30年もの月日を超えてもなお雑誌の特集記事になり、壮絶な生き様に憧れるすべての不毛な思春期を支えているんだなと思うと感慨深いものがあります。・・さんざん感化されたあげく、会社に鮨詰めというポップな末路を辿っている思春期卒業生もここにいますが。


 それはさておき、こういった記事を見ていて最近しばしば思うのは、果たしてこのようなロック・レジェンド達は今世でも誕生し得るのかどうか。という事。
 所謂「ロック」という音楽が台頭しはじめたとされる50s〜70sにレジェンドな存在が多い事は幾年経っても不動なんだろうけど、この頃(ころ)のミュージシャンに並ぶ、壮絶なドラマを背負ったロック・ヒーローが現代でも誕生し得るかどうか、と。

 正直、うーん。例えばロックンロール・リヴァイバルを起こしたストロークス、若くしてセンセーショナルなデビューを飾ったアークティック・モンキーズ、名実ともに世界的な人気を確固たるものにしたコールドプレイ。00年代に登場した奴らが、例えばピストルズビートルズストーンズに並ぶドラマを今後描けるかどうか、説得力を持てるかどうか、30年後の不毛な10代に憧れを与えてあげられるかどうか。正直、うーん・・・なんか頼りないなぁ。

 って言うのは、当のバンドさん本人達に「なんか頼りないなぁ」と言うよりも、むしろそれを「聴く側」「伝える側」もよっぽど頼りない現状があるんじゃないかと。00年代って、リスナーがしっかりドラマを描けてないんじゃないかと。バンドにカルマ背負わせてあげてないんじゃないかと。


 時は遡って、初めてビートルズの「サージェント・ペッパーズ(以下略)」を聞いた時、そしてこれがビックセールスを生んだ歴史的名盤だと聞いた時。「なんでこんなヘンテコリンなアルバムが売れて、そしてこんなにも後世に語り継がれているのか。」と悩んだ事がある。悩んだ末に出た答えは、おそらく、1.大衆にシャレが通じる時代だったって事と、2.この時代に秀逸な「語り手」がいたんじゃなかろうかという事。あくまで憶測。
ビートルズの音楽にリンクするよううまくドラマを仕立て上げ、付加価値を目いっぱいに付けて商品価値を高めた語り手がいたんじゃないかと。だって「サージェント・ペッパーズ」ポンと渡されて、「すげぇ!最高にクールなアルバムだ!」って普通思う?・・妙ちくりんなアルバムだぁーって、まずは思うよね。きっと。

 要はそういう事で。(どういう事だろう。)

 なんていうか、僕の中で物凄くストーリーのあるこの話を、なんだか半分も出しきれていないような感じがして胸が詰まる思いなんだけれど、つまりロック・レジェンドって、僕等リスナーが作っていかなきゃいけないんだよね。って事を、最近しばしば思ってて。優秀な音楽に、優秀なドラマを僕等が書き足す事が出来れば、きっとピストルズビートルズストーンズも、また生まれるんじゃないかなぁ。って。だから僕等はタナソーの「Kid A」評みたいに(笑)、もっと自分と音楽の間だけに生まれたごく個人的なドラマを押しつけあっていいと思うんだっていう・・・嗚呼、結局よく解んないね。

 断念。また書けたら書きます。仕事に戻ります。